はじめに
私が初めて論文のルールとやり方を守って書き物をしたのは、学士の卒業論文だった。商科大学だったが、社会言語学のゼミに入ったので、ことばについてデータを集めて書いた。商科大生だったので、企業内でのコミュニケーションって大事だよなと思い、「提案表現」について書いた。
これを書くにあたって、かねがね面白いなと思っていたSpeech Act TheoryとPolitenessを絡めて書いた。 今日は後者のポライトネスについてちょっとだけ面白さを伝えたい。
言語学ポライトネスの話
ポライトネスとは、ざっくり言えば「丁寧さ」である。
言語学で言えば「敬語」がぱっと浮かぶと思う。でもBrownさんとLevinsonさんが1978年に出した論文や1987年に出した本には、それ以外のことがたくさん書いてあって、面白いのだ。
普遍現象として、どこでも使える理論
「英語には敬語がない」という人がいる。確かに日本語や韓国語のように複雑なものは英語にはないといえるが、丁寧な表現はある。先生に対して「Give me the answer, please」なんて言ったらムッとされそうだが、「Can you?」で文を始めれば避けられそうだ(前者はPleaseがあっても「命令文」なので注意)。
こんな感じで、どの言語でも「言い方」に気を付けないと、ムッとされる。これに着目したBrown and Levinsonは、日本語と英語を含むいろいろな言語からサンプルを集めて、ポライトネスを「普遍現象」であるとした。(のちにいろいろ反論も出て面白いのだが、ここではいったん放っておく)。
終わりに:余計な気遣いを減らしてくれる便利な理論
だれかに気を使わなければならないとき、この理論を知っておけば、いろいろ考える指標になる。「理論を使う」と考えると難しく思うかもしれないが、理論はもともと複雑な世の中を説明するためのものだ。
ポライトネスを使うと機械的に「なんていうべきか」を導きやすくなるので、余計な気をつかわずにすむ。
次回は、理論の内容に踏み入って、「人間の2つの根源欲求」と「それらの満たし方」についてご紹介します。