相手を満足させるには「メンツ」の概念がキー
Brown and Levinsonはまず、Goffmanという社会学者の概念「Face」に注目した。日本語でもいうメンツ(面子)に相当するもので、人とかかわる中で絶えず持ち上げられたり、時には傷つけられて恥をかかされたりする。人と仲よくしようとすると確かに、常に気を配らなければならない大事な概念だ。
BrownとLevinsonはこれに対して、Faceを「欲求」としてとらえなおし、2種類のFaceを提唱した。それがPositive Face(近づきたい欲求)とNegative Face(離れたい欲求)だ。
気遣いの方向性1:「近づきたい欲求」を満たしてあげる
Positive faceは、ざっくり言えば、だれかと近づきたい欲求。そしてこれが傷つかない様に気を遣うことをPositive Politenessと呼んだ。
例えば、友達をランチに誘ったのに、断られてしまうこともあると思う。この時の「突き放されて悲しい感じ」=Positive faceが傷ついた状態。
この気持ちを修復するために、例えば「じゃあ代わりに明日の夕食はどう?」と誘いなおしてあげるのがPositive Politenessとなる。
「近づきたい欲求」を満たしてあげる23の方法
相手の「近づきたい」「認められたい欲求」を満たして、人間関係を円滑にする時、以下から選んで発言すると良いということになる。これもBrown and Levinson(1987)から一部抜粋し、日本語訳したものである。
承認欲求を満たしてあげたいけど、どうしたらいいの?考えるのめんどくさいんだけど?という人に非常に有益なリストである。
- 相手 (の興味、欲求、ニーズ、持ち物)に気づき、
注意を向けて発言する - (相手 への興味、賛意、共感を)誇張する
- 相手への関心を強調する
- 仲間ウチであることを示すキーワードを用いる
- 呼ぴかけ表現を使う
- 仲間言葉や方言を使用する
- お互いが知ってる専門用語やスラングを使用する
- 縮約と省略:お互いしていることを「あれ」などで省略する
- 不一致を避ける
- 形だけでも同意する
- 罪のない嘘を言う
- 共通基盤を喚起・主張する
- うわさ話、スモール・トークを積極的にする
- 話の中心人物の転換—相手を話題の中心においてあげる
- 冗談を言う
- あなたが相手の協力者であることを伝える
- あなたが相手のやりたいこと好きなことを承知し、気づかっていることを伝える
- 申し出たり、約束する
- 楽観的に接する
- あなたと相手の両者を行動に含める
- 理由を述べる(もしくは尋ねる)
- 相互性を想定する、もしくは主張する
- 相手に贈り物をする(品物、共感、理解、協力)
承認欲求を満たすだけではだめ?
できるだけ頭のリソースをつかわず、かつバリエーション豊かに相手の承認欲求を満たしてあげるにはもってこいの方法だ。まさにエコロジーである。自分も疲れずも。かつ相手も喜んでくれるのであれば、これ以上の平和はない。
気持ちをわかってくれるのは確かにうれしい。でも人によっては、また同じ人でもタイミングによって、そうでもないことがある。人間には「人と離れていたい」という欲求もあるのだ。
次回は離れたい欲求を満たしてあげる言動、「ネガティブポライトネス」について紹介する。